道内でDXに挑むフロントランナーたち
「DX化と言われても、何から取り組んだら良いか、課題がわからない。」「自社だけではDX化は難しい。専門家に相談したい。」という悩みを持つ事業者様向けに、DX化を推進するサプライヤー / DXを自主的に推進する企業などを紹介します。
サプライヤーインタビュー
ロボット化こそ人材不足解消の切り札
少子高齢化に伴う人手不足が深刻化している。ロボット化による作業自動化やDX化の必要性が叫ばれて久しいが、産業用ロボットのシステム開発を行う株式会社ロボットシステムズ(上砂川町)の覺張千万(がくばり・ちかず)社長は「特に北海道の基幹産業である食品業界での導入が遅れている」と指摘。ロボット化やDX化が遅れるほど産業の存続そのものが危ぶまれると警鐘を鳴らす。ロボット導入の必要性や生産性向上の事例などを覺張社長に聞いた。
今回紹介するサプライヤー
株式会社ロボットシステムズ
代表取締役
覺張 千万がくばり ちかず
人に代わり単純作業、労働環境も改善
ロボットシステムズの事業概要から教えてください。
ロボットを製造するのではなく、ロボットを使用した機械システムの設計、導入提案をする「ロボットシステムインテグレータ」です。人間に代わって単純作業を行う産業用ロボットのプログラムや周辺機器の開発を行っています。2020年に創業し、さまざまな業界のニーズに合わせたロボットシステムを40〜50台導入しています。ロボットは動かすこと自体は簡単ですが「必要なものだけをつかむ、持ち上げる」動きが難しい。正しい動作をさせつつ、無関係な場所に触れないようなプログラムを開発し、ロボットに求められている作業全体をいかに正確に効率よく動かすシステムに仕上げるかが重要です。
ロボットに求められる機能はどのようなものが多いのでしょうか。
業界によらず多くの企業が求めるのは、箱のような荷物を積み上げる、下ろすといった作業を行う「パレタイジングロボット」です。単純な作業ですが継続して行うと体への負担が大きいので、ロボット化による労働環境の改善が期待されます。また、中小企業は設置スペース制限があるため、コンパクトなシステムの開発にも力を入れています。ロボット導入により、これまで単純な作業を担っていた人材を生産性の高い現場に再配置できます。
生産性向上で導入コストは回収できる
ロボットの導入でDX化が大きく進んだ事例を教えてください。
弊社と同じ上砂川町にあるガラス工場のケースです。顕微鏡用プレパラートのガラス製造において、ガラスを1枚ずつ専用のカセットに入れる作業をロボット化しました。従来は従業員40人が手作業で行い、一人が1日に行える作業量は15,000枚から30,000枚でした。そこで1日20,000枚の作業ができるロボットの開発がスタート。2年間で実用化にこぎつけました。ロボットを5台導入し10万枚の生産能力になりましたが、このシステムを従業員一人で管理可能となり、大幅に生産性が向上しました。現在はロボットが40台にまで増えたほか、人が直接ガラスに触れる機会が減ったことで製品の損傷リスクも軽減しました。
依頼の多い業種や分野はありますか。
食品関係の企業からの依頼が8割を占め、特に乳業会社や野菜の二次加工現場、製麺会社が目立ちます。全国的な企業も地場メーカーもありますが、中小企業が多いですね。
ある乳業会社に導入したシステムは、キャスター付き台車にロボットを2台搭載。ロボットの手先のパーツを変えることで複数の作業が可能なシステムを実現しました。これにより投資の回収期間を短縮し、効率と生産性を向上させることができました。
DX化やロボット化で生産性が上がることは明らかですが、特に食品関係で進んでいないと思われるのはなぜですか。
食品工場で扱う商品は定型化されていないことが多く、ロボットによる対応が難しいのです。また、人間の作業スピードが速く、不良品を取り除くような品質チェックの工程では人間の方が有利です。規格外を見分ける判断をして、それだけをつかむ機能と、サイクルタイムを合わせることがとても難しい。これに対応するためのロボット開発には高いコストがかかるため、導入が難しいのが現状です。
コストと生産性の見合いについては、解決方法がありますか。
一度ロボットを導入し、その効果を目の当たりした企業は、どんどん導入を進めていきます。1台のロボット導入がきっかけで、一気に20台程導入が進んだケースもありました。企業側が効果を実感すると自分たちで作業の自動化を考え始め、省力化と効率化を推し進められるようになるわけです。やがて導入コストを生産性が上回り回収できる段階に到達します。
早く行動しなければビジネス存続の危機に
この先注目していきたい業界、DX化を進めたい領域などありますか。
日本全体の人手不足が6年後に644万人に上るとのデータがあります(パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計」)。家庭に入っている女性に労働してもらう、シニア層の雇用を延長するなどのアイデアはあるかもしれませんが、不足分のすべては賄えません。少なくても半分の300万人分くらいはロボット化、DX化でカバーしないといけないと言われています。
注目していただきたい取り組みがあります。札幌のレストランで実施しているキッチン自動化の実験プロジェクトです。これは料理の「焼く」作業をロボット化するなど、厨房作業の一部を自動化し、効率的な運営を目指しています。食材の供給は人の力を使います。そこまで自動化してしまうと、コストに見合わなくなる可能性があるためです。どこまでロボット化したらどんなオペレーションが可能になるかを確認して、もうすこしロボット化できる作業が増えたら、システム全体の作り込みを始めます。
省力化やDX化で働き方を変えられる余地は、まだまだ大きいですね。
配膳ロボットが導入されている飲食店がありますよね。これは便利かもしれませんが、動作が機敏ではないので忙しい時間帯では邪魔になることが多いのです。最適な運用方法を見据える必要があります。それに配膳ロボットに料理を載せるのは人なので、人の作業量自体はそれほど変わっていないと思います。いずれは料理の盛り付けから配膳までロボットが行い、人はロボットを管理する仕事にすべきでしょうね。
また、24時間運用している工場などは、今後求人を出しても人が集まらなくなりますので、対策としてDX化に踏み込まざるを得ません。例えば遠隔でどこからでもロボットを動かして生産状況を見られるシステムを作れたら一つの解決策になるでしょう。在宅勤務ができますし、夜間は自宅からオペレーションできるので求める人材の条件も幅広くなります。あるいは早朝深夜の時間帯は、その時日中を迎えている国で操作できれば、もっと良い労働環境を提供できます。人手不足であっても家からなかなか出られない事情の人もいるでしょうから、その人たちの就職にも役立つかなと思います。
最後にDX化を検討している企業へメッセージをお願いします。
人材確保は今後さらに深刻な問題になりますし、あと3、4年で全然求人が来ない時代におちいる可能性は高いのです。すでに「もう生産を止めないといけない」という声も聞こえてきています。そのため、生産やビジネスの維持を目指す企業は、早めにロボット化やDX化へのアクションを起こしてほしいと思います。今後、ロボット製造に関わる業者間の情報共有ネットワークを構築しようと考えています。ライバル同士ではあるのですが、もうそれを問題にする状況ではありません。情報共有を進めて「こんなシステム作れますよ」と、より効果的なDX化の推進をさまざまな企業に促せるようにしたいですね。とにかく早く動き出すことが必要です。
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